味わいの分析図

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(用語の補足 表の上部から順に)

・甘味:そのまま脳の受容体細胞でキャッチ。生理的に好む味、本能的な味。疲れで美味(糖類は植物が二酸化炭素と水を原料に光合成により造り出すもの故、食物にこのエネルギーが入っているかどうかは甘味により見定められる。よって疲労すると甘い物即ちこのエネルギーを体が欲する)。尚、清酒における麹由来の甘味は砂糖とは違い口中でべた付く事が無く、味は厚いけれども諄くなく、氷を加えても間延びしない、非常に綺麗で心地の良いもの(米麹の甘酒が最も分かり易い例)

・酸味:水素イオンと膜の相互作用で感じる。腐敗物に特徴的で、本来人が命を守る為に避けねばならぬ物の味、警告シグナルで生理的に好まない味、訓練しなければ慣れない味(子供はビタミン〈酸〉不足に陥り易い)。苦味を伴う事もある。ワイン中の主な有機酸には葡萄由来(酒石酸〈塩味を伴う酸味〉、リンゴ酸〈鋭角的な酸味、僅かに苦味→林檎〉、クエン酸〈爽快な酸味→柑橘類〉)と発酵由来(コハク酸〈濃くのある旨い酸味、貝汁の旨味→清酒〉、乳酸〈渋みのある温和な酸味→ヨーグルト〉、酢酸〈刺激を伴う酸味→酢〉)がある

・塩/かん味:イオンチャンネルでキャッチ。生理的に好む味、本能的な味。疲れで美味(自然界に存在する塩味はNaClだけでなく、各種ミネラル成分〈金属元素〉にもあり、それが人の体液バランスを保ち肉体機能を調整する)

・苦味:そのまま脳の受容体細胞でキャッチ。自然界では薬物や毒物の味ゆえ本能的に忌避。訓練しなければ慣れない味(子供は ミネラル〈苦〉不足に陥り易い)。最も感度が高く長く続く。欧州では濃くと余韻を齎す良い要素として受け入れられる。苦味が在るからこそ他の四味全般を引き締め、後口が辛口(酒類で言う「辛口 / DRY」は甘味の無い事を指す)になり、シャープさ、新鮮さに繋がる。ワイン中の他の成分と合わさると旨味のある苦味となる

旨味:そのまま脳の受容体細胞でキャッチ。蛋白質(肉質)のシグナルで、体を作るアミノ酸や核酸から成る。生理的に好む味、本能的な味

・辛み:三叉神経(温度や痛みを感じる器官)が刺激されて起こる。舌のヒリヒリ(カプサイシンの熱さやメントールの冷たさ)。辛さと熱は同じ「痛覚」を通して感知される

渋み:三叉神経が刺激されて起こる。収斂性(濃い緑茶を飲んだ時や割り箸を吸った時の水分喪失感。非常に酸っぱい林檎を食べた時にシュワッとする感じの様に、酸味が収斂性を持っている場合もある。ワインではドイチャーゼクトb.A.の様な寒冷地の泡に感じられる事が多い)

・基本味(定義)①舌で受け取られる ②味神経を介して脳に伝達 ③他の基本味とは独立した情報として脳内で認識 ④他の味を混ぜ合わせても作れない ⑤普遍的な味

・濃く:一部の研究者の間では「濃く味(脂肪性風味)を基本味に」との声も。「グルタチオン」なるアミノ酸が3個結合した物で、一般にトリペプチドと言われる物質。それ自体に味は無いが、他の味の広がりや持続性に影響すると考えられている。敢えて味として表現するなら、これは濃厚な旨味で、ワインの場合は旨味というより甘味+苦味。一部新世界ワインのどぎつい濃さのイメージ

・触覚 → (例)発泡:爽快味(刺激味)。ドライアイスが最も分かり易い例で、鼻を近付けて嗅ぐとツーンとした刺激臭(痛み)が走る。口中では爽やかな刺激を与え、風味を新鮮で若々しく感じさせる(舌の酸味を感じる細胞は、二酸化炭素を重曹〈重炭酸イオン〉とプロトン〈水素イオン〉に変える酵素を出す。そしてこのプロトンが酸味として感知される。pH値が水道水と然程変わらないのにも関わらず天然炭酸水に若干酸味を感じるのはこの為。逆に気の抜けたソーダが甘過ぎるのは二酸化炭素が無くなり甘味を相殺するプロトンが作られない為)。要するに、[炭酸 =(水に溶けると)弱い酸 = 酸味] の図式。(※温まると液に溶ける空気量が減るので泡が多く出る → げっぷ:体温で温まる事が原因)(参考:ビールの泡が長く残るのは原料が穀物で、即ち麦芽由来の蛋白質が多く、それよって安定化されている為。スパークリングワインも少しは在る。一方炭酸水は蛋白質を含まないので直ぐに消える。またシャンパーニュの「飾り襟コルレット」は口紅の脂肪分で消えてしまう)

・美味しさ:五味と五感を総合して、その美味しさを表現すべし。どう美味しいか、感覚を言葉にして記憶しておけば、将来同じ様な美味しさを感じた時に、以前と比べて何が違うのかが分かるようになる。そうすれば、もっと美味しくする為には何が加われば良いのかも想像出来る。(田崎真也さんの受け売りです…)