旨味

UMAMI:世界共通公式用語。龍谷大学農学部の伏木亨教授の表現を借りれば、旨い味ではなく、「料理を旨くする味」

 蛋白質のシグナルであり、天然食材に含まれる。世界の料理のベースである「だし」に相乗効果を齎す(和のだしは旨味成分のアミノ酸などで、薄口醤油的に素材を引き立てる。一方、洋のブイヨンは他の成分も含む多重構造のアミノ酸で、濃口醤油的にソースの味が全面に出る)。「食べた後に舌にうっすら残る、表現し難い微妙な味」や「鈍く、やや生臭く、退廃的な止められない味」などと表現される。1908年7月25日、東大教授で物理化学者の池田菊苗が昆布の抽出液から旨味成分を発見し、発酵法によりそれを商品化した旨味調味料「味の素」は日本十大発明の一つ。(しかし当時は科学的証拠が無い為に認められず、後に味覚生理学、口腔生理学、栄養学、食品学の研究が進み、2002年にアメリカ研究者により舌の味蕾に旨味を感じるアミノ酸の受容体が発見され、凡そ100年掛かって、UMAMI という日本語表音で世界的に認知された。因みにグルタミン酸は1866年ドイツ科学者リットハウゼンに発見されていたが「不味い弱い酸味」とされ、それを池田教授が美味しさと結び付けた。「注意深く物を味わう人は、トマト・チーズ・肉・アスパラガスの中に共通の味」を見出す。フランスでは味覚の教育があり、四味を理解する授業もあった。そして最近に為って其処に旨味が加えられたが、旨味を表す試験液が無い為「旨味は存在するが教えるのは難しい」と記す教科書もあるという。旨味は、実験的には甘味と同様に世界中の人間が先天的に好ましく受け入れられる味であるが、欧米では肉や油脂、香辛料の分厚く複雑な味が前面に出る為、旨味は目立たないのである。詰まり、旨味は酸味や甘味、或いは 渋み によって簡単に消えてしまう為、そういった味の強い洋食には、味の強いワインが対抗出来るのである。対し、一般的に日本酒は白ワインの十倍程の旨味系アミノ酸を有し、それは一番だしの三分の一程度である事から、日本酒はやや淡い旨味溶液とも言える。そしてグルタミン酸等のアミノ酸グループと、イノシン酸やグアニル酸の様な核酸グループの異種の旨味成分が舌の上で出会うと、旨味の相乗効果が表れる事が分かっている。よって旨味主体の和食には、日本酒は言う迄も無く、瓶内二次発酵 による旨味の有るシャンパーニュが合うのである

・アミノ酸(穀類や豆類の蛋白質が分解されたもの = 発酵調味料):醤油、味噌など

・グルタミン酸:昆布、納豆の粘り、チーズ、トマト(ソース、ケチャップ含む)、人参、セロリ、長葱・玉葱、白菜など(参考:人が生まれて最初に口にする母乳には脂質、乳糖、蛋白質、ミネラルと共にアミノ酸が含まれており、全アミノ酸の50%をグルタミン酸が占めているという。即ち赤ん坊は誕生時より旨味を味わっている訳で、人類は皆旨味を感じる能力が有る事になる。対し牛乳にはアミノ酸は殆ど含まれていない為、加工ミルクで育てられた赤子は味音痴に為る…かも)

・イノシン酸:鰹節、帆立貝柱、肉 → 鶏と玉葱のエキスがコンソメ

・グアニル酸:干し椎茸(生には殆ど無し) → アメリカでは UMAMI BURGER(椎茸入りハンバーガー)なる物も(アメリカでも旨味の概念は、レストランやワイン業界においては既に広く理解されて来ていますが、「セイヴォリー(滋味)が有る」という風に解釈されているそうです。このsavouryという用語、日本語だと「食欲をそそる」「旨味を思わせる」と訳される事もありますが、ワイン用語だと「果実味以外の特徴」を指し、ハーブやスパイス主体のワインに使用されます。この語はイギリスのWSETでも赤の瓶熟による第3 アロマ として位置付けられ、「果実味に溢れていない、果実の甘味のない」≒faded fruits「果実香がしない」=旨味、と定義され、矢張り我々日本人としては違和感を覚える捉え方をしているようです。それも文化の違いからで仕方の無い事でありましょう)