瓶内二次発酵

トラディショナル方式(此処では一般的なシャンパーニュの製法を記載)

①ベース(原酒)となる アサンブラージュ した白ワイン(一次発酵後、約Alc11.2%、最大でも11.5%だが、殆どが11%)の瓶詰め時に、少量のワインに溶いた酵母と蔗糖を加えて王冠で栓をする

②1L当り糖分4gで1気圧になるので、シャンパーニュとして一般的な6気圧(※)にする為には6倍の24gの糖が必要

③酵母の働きで糖がアルコールに変わり、約1.3~1.4%増加するが(約Alc12.5%)、同時に炭酸ガスが生じる。こうして密封された瓶の中で出来た炭酸ガスをワインに溶け込ませる

④大体6~8週間後に二次発酵が終わるが、するとかなりの酵母の残骸による澱が瓶内に付着する。しかしこれがシャンパーニュの味わいには大切で、酵母は蛋白質で出来ているため熟成によってアミノ酸に変化してワインに 旨味 成分とイースト香を与える(参考⇒澱(フランス語 Lie リー)シュール・リー

この製法によるものの代表例としては他に、フランスのクレマン、イタリアのフランチャコルタ、スペインのカヴァがあるが、それぞれ法規定が異なり、造り手の哲学も異なる為、瓶内二次発酵を強調する市場戦略には踊らされないように。(最近ではスパークリング日本酒においても「瓶内二次発酵」と称される物があるが、実際は清酒を造ってからまた新たに糖と酵母を添加して発酵させるのではなく〈清酒精製後の新たな加糖は清酒とは別品目の酒類〈リキュール〉の製造行為〉、一般的には上槽〈搾り〉後に残った糖分及びまだ活動する酵素や酵母を有する醪を、製造した清酒の瓶詰め時に混ぜ合わせる事によって再発酵されて造られる。瓶内ではワインの様に酵母による風味の厚みが齎される事は無い為、日本酒の場合は必ずしも長期熟成は必要とされない〈しかし泡をより滑らかにする効果はある。一般的に3週間~1箇月、最長で1年半ほど〉。因みに日本酒の泡の製法に定義はなく、①活性清酒(火入れをせず酵母が生きた状態の濁り酒)②上槽後タンクや瓶内で発酵を継続させ、炭酸ガスを溶け込ませたもの〈滓を除いた物と薄濁りの物がある〉③炭酸ガスを吹き込んだもの、等がある。尚②の製法等を規定とするawa酒協会も2016年に設立された⇒https://awasake.or.jp:濁らないようにする方法があるが、特許による守秘義務により謎に包まれている。又、清酒の場合は一次発酵から一切の糖類添加が許されない為〈詰まりノン・ドザージュ〉、目的とする味を実現させるのが困難を極める〈シャンパーニュは二度、詰まりティラージュ時で二次発酵の為、そしてドザージュ時で味の調整の為に計算して添加可能〉)

◎一覧表 ⇒ 瓶内二次発酵ワイン

上の表からも分かる通り、熟成期間も異なれば使用品種も異なる(此処では割愛したが収量制限も)。スパークリングワイン用高級品種はシャルドネとピノ・ノワールであり、カヴァにおいては高級品に使われる。また明確に酵母の自己分解によるイースト香が出現するのは瓶内熟成15ヶ月以上とも言われている。したがって手頃なカヴァは瓶内熟成由来の性質は軽く、飽くまで生き生きとした果実味を楽しむ物という事をご承知おき下さい。(これらの風味など特徴の違いはコチラから⇒華麗なる賭け

※ 6気圧=ロンドンの2階建てバスのタイヤ(一般乗用車1,8気圧、3tトラック3気圧)=水深50m。泡用コルク栓には1平方インチ(≒2,5㎠)当たり70ポンド(≒32㎏)の圧力が掛かっている。要するに、時速50㎞のキノコミサイルに為り得るという事。アメリカでは年間80人以上の怪我人が出ているというデータも。したがってシャンパーニュの瓶は頑丈で重く(19世紀マダム・クリコの時代は瓶や栓の性能が十分でなく、作業員が爆発的事故で命を落とす事もあったとか〈⇒ヴーヴ・クリコの生涯〉。現在においても手作業でのルミアージュには防護手袋と防護眼鏡が必須。また底が平らでなく上げ底で造られているのは落とした時の衝撃対策(実験済みです…ホントは滑っただけですが(;^ω^) 元々は工業技術が未熟な頃、瓶を安定良く立たせる為に凹ませたのだとか。因みにボルドーは澱対策)