メイラード反応

 概要イメージ:蔗糖を加熱(※1)→状態変化透明な水飴状メイラード反応(※2)→キツネ色カルメラ化(※3)→褐色炭化燃焼

 ※1 化学反応にはエネルギーが必要。物質の分子は加熱すると運動エネルギーが増加し変化する

 ※2 低温。糖とアミノ酸の反応による香ばしさ

 ※3 高温。酸化反応による甘い香り

 Maillard Reaction(20世紀初頭の、この化学変化の発見者 Louisルイ Camilleカミーユ Maillardメヤール の英語読みから)、一般的な呼び名はアミノ・カルボニル反応。糖分が、(気温が激しく上昇すると劣化するアミドンとグルテンと酵母に含まれる)アミノ酸と反応した結果生まれ、色や アロマ の付いたメラノイド(パンの堅い皮に存在する成分)が齎される(トースト香は赤でも白でも、その状態が最も良い時期に優雅な形で強調される。パンもワインも酵母の賜物〈パン屋にとりアルコールは不要のため閉じ込める必要は無く揮発させた儘にする。そしてアルコールと共に発生するCO2がパンをふんわり美味しくさせる。パンとワインの相性が好いのは当然〉)。身近な例は、林檎の皮を剝いた後に茶色に変わる現象。あれは、果皮に付いた傷を修復する酸化酵素ラッカーゼの働きと共に、林檎内の糖分と空気中の酸素が結合する為で、またその結果香ばしくなる。ビールの色素もこれに由来(モルトの加熱段階の熱による大麦と糖とアミノ酸が反応して)、醬油や味噌の色も同様。日本酒の熟成古酒もこの反応を経た物で、時と共に山吹色から琥珀色へと変化し、カラメルや蜂蜜、木の実やスパイス、檜や香木といった重心の低い香りを得、より滑らかな口当たりと複雑で量感のある味わいが備わる(達磨正宗がメイラード反応による熟成から巧みに酒質を設計する代表的な蔵元)

 (因みに良く言われる「老ねヒネ臭」とは酒造専門用語で、一般的にネガティヴな意味で「時間的変化」を表す。言わば劣化熟成臭の事で、焦げ臭や硫黄臭が代表例(専門家が「老香」に対して有する印象は硫黄化合物の臭いに近いのだとか。分かり易い例は大根漬け物の不快臭で、これは大根が含有する辛み成分の分解により発生する硫黄化合物が原因)。他に藁、古い書物、麦芽、キャラメル、古いバターぽさ等、違和感を感じさせる臭い。老酒、古いシェリー、マデイラに共通した風味を生む。一方「なし」とは積極的・意識的介入を言い、燗による短時間の熟成効果を指す。杜氏は酒に軽く燗を付け、熟成後の酒質判断の手掛かりを得ると言われる⇒燗酒

 ワインにおいては、熱や紫外線の影響でより早い熟成をした時に、トースト、カラメルやトフィー(バター、砂糖を煮詰めた物)に黒糖(赤で)、血合いや鉄、醤油っぽさ、蜂蜜やメープルシロップ、昆布のヨード香、鰹節(燻製香)、マッシュルーム、藁、ナッツの香りを付与し、その度合いは時間と温度に比例する

〈参考〉ピークを過ぎたワインは全て個性がマデリゼ(マデイラ化:ポルトガルのマデイラ島で加熱熟成法により作られる酒精強化ワイン)≒無個性化