第三十一瓶 清酒の味わい方(香り)

 清酒はワインほど外観が有する情報量は多くなく、ワインにおいて醸造方法の違いから生まれる赤・白・ロゼ・オレンジと比較して、清酒は白ワインの様に黄色が基本色ですので(純米の本来はフラビン系色素による山吹色)、外観から造りの差異を見留める事は一目瞭然という訳には行きません。むしろ、濾過 の有無があるため色の濃淡は特定名称の判断材料にはならないと言うべきでしょう。よって複数種のテイスティングにおいては、普通は全て異なる造りの物が並べられる為、最初に一通り香りを嗅いで全体像を捉えるのが宜しいかと思います。又ワインでは色・香・味を通して(主に品種特徴と南北感から⇒テイスティング実践)最終的に ヴィンテージ・生産地・葡萄品種の断定へと辿り着きましたが、生鮮食品である葡萄とは違い穀物である米は移動可能(※1)な為、生産地特定は重要視されず、主に香りから酵母を(※2)、味わいから品種を、そして香味から酒母(酛)を定めて行く事が、清酒におけるテイスティングの概要です。

 ※1 曾ては気温は変えられず、水は運べなかった(酒造用 は大量に使う為、その土地の水源を使うしかない)。しかし米は運べた為、北陸や東北などで酒どころが生まれた。今は電気などで温度管理が出来るが、矢張り水は運べない。そこで今迄眠っていた静岡県等の水の良い地域が大きく躍り出て来た

 ※2 当会では酵母の種類とその機能を列挙する事は致しません。何故なら、教科書的な20種程の「きょうかい酵母」の情報ならその気があれば容易に入手出来る情報ですし、閑散とした酒屋にずかずか入り込んで「KArg1901酵母の酒、ある?」と返答に窮する照会を吹っ掛けて店員の目を丸くさせるへそ曲がりの客も十年に一人居れば良い方でしょうし、抑々そもそも使用酵母が公表されていない酒の方がちまたには多いですし、約三十種類にも及ぶ花酵母(※3)なんてものも存在しますし、更に突き詰めて言うと、本来は各蔵各様の蔵付き酵母があり、また現在進行形で新株の開発も試みられている訳ですから、全酵母の種類と特長を余さず一々挙げて行く事は、酵母を肉眼で見る事が難しいのと同じくらい難しい事です。尚、こういった酵母が培養され入手出来るように為ったのは、ヨーロッパから微生物学の知識が入って来た明治四十年代からの事で、それ以前は当然自然に存在する酵母が頼りであった。余談だが──各酵母は皆親類関係にあるのだが──曾て味噌酵母で清酒が醸せるか実験され、出来上がったのは或る程度のアルコールを有する味噌汁の 匂い のする酒だったという…

 ※3 中田久保ひさやす氏が自然界の花から酵母を分離する方法を確立した事から始まり、桜、コスモス、ナデシコ、苺、菊、椿、日月草、さざんか、カトレア、リンドウ、ソメイヨシノ、桃、牡丹、サクランボ、ツルバラ、ベゴニア、シャクナゲ、向日葵、アベリア、ツツジ、チューリップ、カーネーション、マリーゴールド、月下美人といった花酵母がある。自然界で清酒酵母が多く集積されるのは、糖度のある果実や花(餌と為る糖を含む為、酵母が生存出来る)ゆえ、果実と花が探求対象となる。しかし果実はワイン酵母が集積され易いので、花が清酒酵母の研究対象として集中した(本格焼酎にも活用されている。なお花以外には、空気中に漂う種々の微生物からの清酒酵母の分離にも成功している)。花酵母は直にその花の香りを生成するものではないが、既存酵母にない香味を生む可能性を秘めている(一般的傾向としては、品の好い香りと優しい味わい)。因みに、海洋深層水からの分離酵母という変わり種を使用した清酒も造られたようで、花酵母には見られない独特な香味の酒が出来たのだとか。またワイン酵母で醸された清酒も見掛ける機会が増えて来たが、その特徴は、低めのアルコール度かつ酸の多さを活かした甘酸っぱい酒質である(醸造的視点から見ると、或る実験結果に拠れば、発酵力とアルコール耐性が弱い為、スパークリングワイン用の数株を除いて殆どの株が清酒酵母よりも日本酒度の切れが悪く、アルコール収得量が低く、酸度とアミノ酸度、そして酵母死滅率が高く為るという事である)

 さて本稿は香りの分析です。先ずは次の表をご覧下さい。

J.S.A.SAKE DIPLOMA テイスティング用語選択用紙より抜粋

 何の予備知識も無く上の表を見ながら、目の前にスッと出された謎の清らかな酒から 匂い を十個以上当て嵌められると言う方は、恐らく稀に見る鋭敏な嗅覚の持ち主ではないでしょうか。

Part of WSET Level3 Systematic Approach to Tasting Sake

 一方、こちらは事前に分類してある為、より目の前の謎めく清酒の特徴を摑み易いかと思います。いずれにしましても、既に私達はワインのテイスティングにおいて 嗅覚 を人並み以上に鍛錬して御座いますので、上記の表と照らし合わせつつ幾分の追加訓練を経れば、清酒のテイスティングもそう難しくなく修得出来る事でしょう。──えっ、「こちとら資格狙うもんじゃねえて、そうあっさり片付けんな、べらんめえ」ですって? むむ、確かにこれで終わりにしては、唯の画像を貼り付けただけの不精な記事に過ぎませんね。よろしい。では此処で、蒸し米を嚙んで口嚙み酒(※4)を造るように、清酒の アロマ の捉え方を容易に飲み込めるよう嚙み砕いて差し上げましょう。

 ※4 米を嚙む事で唾液中の炭水化物を分解する酵素アミラーゼがデンプンを糖に変えて、酵母によるアルコール発酵が可能と為る(参考 並行複式発酵)。この製法の中心地は南米で、アンデスではトウモロコシを、アマゾンではマニオックを原料としている。日本では北海道を北限とし、南の沖縄では明治期頃まで行われ、台湾では戦前まで残っていた。明治時代、沖縄石垣島『八重山生活誌』の筆者宮城文氏によると、その造り方は、女達が三人一組になり、先ず硬めに炊いた粳米うるちまいと生の粳米粉カシギを其々嚙んで水槽の水に吐き戻し、一通り嚙んだら水槽の底に沈んでいる米粒をすくって再び嚙む。嚙んだ原料は石臼でき、粗いふるいし、甕に詰めて蓋をしてから発酵させる。日に三日棒で搔き混ぜると三、四日で飲めるようになる。又、住江金之すみのえきんし農学博士著『日本の酒』には、「十五、六歳から十七、八歳の未婚の少女たちが、四、五人ぐらいで平たい容器のまわりに集まって、少し柔かい飯を三本の指でつまんで口中に入れる。嚙んで甘くなったところで吐き出し、一昼夜ぐらい経ってから飲用する・・・私が飲んだ時は甘酒程度でまだアルコール分は殆どなかった」とある。因みに、三世紀頃の日本について記した『魏志倭人伝ぎしわじんでん』に、倭人(古代日本人)は「人生酒を嗜む」とあり、当時酒がかなり普及していた事が読み取れ、「口嚙み酒」の記述が日本で初見の八世紀奈良時代の『大隅国おおすみのくに風土記』から察するにこの酒は倭国にもあったと思われるが、これは人間が酵素製造機に為るが故に、加えて若い女性に限られている事もあり、一度の大量生産は難しい。更にこれは、長時間続けると歯は疲れ、口は荒れ、顎は痛み、非常につらい作業(※5)で、日常的に造るのも困難であったというから、普及していたとはいうものの量的に確保されていたとは考え難い。飽く迄も、素早く発酵させて素早く飲む、保存する事を念頭に置かない酒として飲用されていたと思われる。ところで、古代日本は母系家族で家の祀り事の采配は女性が執っていた為(女性特有の生理的心理的性質によって神懸かりの興奮状態に移り易い事が巫女としての適性だった。初期国家は専制的な武力ではなく卑弥呼に見られるような霊力によって統一が保たれていた事は周知の事実である)、家の中心的存在である女性の事を尊称を使い「刀自」と言った(それが時代と共に、小さな壺や甕で作る家内の小規模醸造から大きな器を使う大規模醸造に為ると男の力が必要と為り、酒造の主導権は女から男へと移って行き、それと同時に刀自が「杜氏」へと変わって行った。因みにその対義語は「刀禰とね(働く男)」。なお最古の杜氏は第十代崇神天皇時代の高橋活日命いくひのみこととされ、活日神社の祭神として祀られている)。万葉集の防人さきもりの歌には、女房が口嚙み酒を造って夫を送り出したと詠われており、口嚙み酒は愛情表現の極致とも取れ、非常に重要な仕事として一家をまとめる女性の役割で、「おかみさん」の語源とも言われる。現在の様に糀菌を使う方法が始まったのは四世紀頃とされ、それ以後口で嚙む必要がなくなった。ちと寂しい…(因みに、気に為る衛生上の問題ですが、古代日本では嚙む前に海水で口をすすぎ、琉球諸島では塩で丁寧に歯を磨いていたとの事)

 ※5 実際に遣れば分かる事だが、意識しながらが故にか、三分間嚙み続けるのも中々骨が折れ、更に続けると顳顬こめかみの側頭筋に僅かな痛みを伴う膨脹感(詰まり筋肉痛ですな)を覚え、それでも頑張ってもう一分程続けるとペースト状に為り嚙めなくなる。唾液酵素により米デンプンが糖化し、加えて唾液と混ざり合いながら液状化も進む事によって、嚙む程に甘味の感度が増して行く

清酒のテイスティングにおいて第1,2,3アロマの分類は定義されておりません。上の表は、ワインのテイスティング法を基に当方が独断で創作したものです

 ワインでは原料に由来する第1アロマが優勢で、醸造に由来する第2アロマが弱い傾向にありました。それは葡萄が色素、タンニン、有機酸、テルペン類などを多く含む為、原料自体が酒質を大きく左右するからです。一方清酒では、性格が大人しい米による第1アロマよりも第2アロマの方が優勢、と言うよりも主体と為ります。そしてその一連の匂いをストレートに生み出すのがずんべら坊主の酵母くん達であります(参考 )。彼等の代謝(※6)によってアルコールと二酸化炭素だけでなく、様々な香気成分(※7)が生産されるのです。清酒における香りの七割を占めるほど酵母の役割は大きく、「一麹二酛三造り」と言われるように、酛(酒母)即ち大量培養された酵母の力も酒の出来に大きく影響するという事です(※8)。それだけでは御座いません。糖類(ブドウ糖グルコース果糖フルクトース蔗糖スクロース麦芽糖マルトース等)が大好物で、他にはアミノ酸や核酸塩基といった低分子の物のみを食し、酸素がある時はグリセロールグリセリンアルコールエタノール/エチルアルコール等の炭水化物に乳酸や酢酸といった有機酸も食べるけれども、でんぷん質や蛋白質は自力では食べられないので穀物や食品を腐らせる事も無い、我々人間にとって最も友愛の情を抱くべき、目に見えないけれどもいつでも身近にいる酵母くん達は、実は酸(※9)をも生成するため甘辛濃淡といった味わいにも大いに貢献する、全く私如き小物の表現力では例えようも無い程に偉大な微生物なのであります!

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微生物の世界には善玉菌も悪玉菌も無く、自然から与えられた自分の使命を全うすべく、彼等は必死に生きているのです。善悪の観念などというものは、人間が、自分達が足並み揃えて生きて行く為に発明した互いの人間性を測る物差しの様なもので、その基準は国や時代次第では正反対に変わるくらい頼りないものですから、して微生物にとっては何程のものでもない訳です。善悪の観念とは人間社会においては輝ける黄金律でも、微生物にとっては獣の糞尿よりも無益なものなのです。加えて彼等も生き物、何時いつ迄も全く同じ儘ではなく、「誰某だれそれの子孫だから」とは限らず善かれ悪しかれ・・・・・・・変わって行くのも人間と同じです。これを生物学では「進化」と言うそうです(因みに、優良な培養酵母以外を野生酵母と呼ぶが、その種類は余りに多く、中には発酵を弱めアルコール生成を阻害する、酸を多く作り酒質を荒くする、酢酸など不快臭を与える、また優良酵母を殺すなど、悪影響を及ぼすものが居る。そしてこの二つの区別は顕微鏡では不可能で、徹底した清潔さと優良酵母の酒母への大量投入により野生酵母に打ち勝つようにする)

 ※6 人と同じ様に核とミトコンドリアを持つ単細胞微生物、即ち命の最小単位である酵母は十二億年前に微生物の祖先として現れた(生命が誕生したのは三十五億年前、我々ホモサピエンスが出現したのは約二百万年前。そして人がこれを制御して「酵母の家畜化」を行うようになったのは一万年前より後の事)。彼等の代謝には、①酸素を吸って行う「呼吸系代謝(好気的生育型)」(C6H12O6グルコース+6O2→6CO2+6H2O)と、②無酸素下で行う「発酵系代謝(嫌気的生育型)」(C6H12O6→2C2H6Oアルコール+2CO2)の二つあり、①は②に比べて10倍以上のエネルギー生成量があり、逆に②は①に比べて10倍以上のグルコースを食べなければならない。もしかしたら彼等も心行くまで酸素を吸い込んで、食事量の少ない経済的な暮らしをしたいのかも知れない。しかしそれでは人間にとって不都合であり、私達が欲しいのは炭酸ガスと水ではなく、アルコールなのである。その為には是が非でも彼等には酸素が無く糖濃度の高い環境で生活して貰わねばならない(故に酒造工程では深い桶やタンクが用いられる)。更に彼等にとっては全く不都合千万な事だが、アルコール度数が12%以上に蓄積されて来ると、自分達の作り出したアルコールで自身の生存が脅かされて来る…我々が求めて止まない酒類は全て、酵母の大いなる犠牲の下に存在しているのである(酵母も生き物である以上屹度きっとらくしようとするであろうが、好きなようにさせてはろくな酒は出来ない。尚、発酵学上からいうと、アルコール発酵は酵母の体内で生産されるチマーゼという発酵酵素の為であり、酵母が直接営むものではないという)

 ※7 カプロン酸エチル、酢酸イソアミル、プロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、乳酸エチル、活性アミルアルコール、酢酸イゾブチル、カプリル酸エチル、吉草酸きっそうさんエチル、アセトアルデヒドなどなど

 ※8 現在使われている培養酵母は、家付き酵母または野生酵母から生酸性、発泡性、発酵温度、芳香生成、発酵力、環境対応性などの性質を調べ、分離育成されたもの。また清酒造りにおいて酵母は2万倍に増殖し、醪1g当り約2億個(単位はCellセル)も含まれるように為るという

 ※9 酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アミノ酸、ペプチドなどなど

 話がやや脱線したようである。清酒は葡萄酒とは反対で「米三割、人七割」(「米二割、人八割」という声も)と言われ、原料依存度が低い飲み物です。それは最良の豆でなくても技術で良い物が出来るコーヒーに似ていて、品種以上に造り手が大切という事でもあります。言わば糀が内に隠れた骨肉なら、酵母は外から見易い上衣うわぎの様な物で、軽薄な時流に乗っかって香り酵母(※10)を使い、清酒であるにもかかわらず誇るべきその特質を軽んじ「ワインの様な」という売り文句で、表面的に取って付けたような高い果実香だけを求める造りの酒は別として、元々清酒は香りが穏やかな飲み物です。よってワインの様に空気接触スワリングによる変化は然程ありませんが、特に揮発性の高い吟醸酒はスワリングにより華やかさが強調され、その特性が感じ易く為ります。しかし過度に行うと香気の消失や酸化が促されるため注意が必要です。又、スワリング前後で香りが変化するものは多くの要素を持っている事が多いです。序でに、これは飽くまで個人的な経験からですが、特に 吟醸 造りの高級酒には水仙の香りが特徴的に感じられ、より高貴な上品さを演出する傾向にあるようです。

 ※10 ポーンと果実香が上がって来て、やや人工的なわざとらしさがある(他の香りと溶け込んでいない。食前酒には好いが、香りが突出するため味とのバランスを取るにはかなり甘めに設計される事になる為、料理との相性は難しい。昔の杜氏は香りが強過ぎる酒は料理の味に障るとし「品が無い酒」と言った。ワインで例えるなら オーク チップでお化粧した物の様)。1990年代半ばに広まり、吟醸香の成分でリンゴ香を呈するカプロン酸エチルを伝統的酵母より何倍も多く生成する事が出来る。更に糀の出来による吟醸香の高低への影響が少なく、熟練者でなくとも吟醸酒が造れると評判になり、長野県の「アルプス酵母」を皮切りに全国で開発され、協会1801号や明利M 310酵母は最近の代表例である。原理としては、カプロン酸は酵母の脂肪酸合成酵素により生成されるが、鎖長が短いため大量には生成されない。そこでその鎖長のバランスを変える為、脂肪酸合成酵素を阻害する薬剤「セルレニン」に耐性のある酵母(※11)を育成し、仕込みに使用する事でカプロン酸エチルが大幅に増加する。この酵母のお陰で新酒の香味の幅が広がったが、当初は巧く夏を越せずにバランスを崩すものも見られた。現在この問題は低温管理により解消されているが、逆に言うとこれは熟成に耐えられないという事である

 ※11 「セルレニン耐性酵母」は1960年代に月桂冠が突然変異を利用して開発した。「鼻曲がり酵母」とも

 本稿の最後に付け加えて置きたいのは上記カテゴリーを統合して香りを捉えるという事です。複合的な 匂い を単体に分解して捉えるのは機械の為せる業で、その様な機械的分析は機械に任せ、私達は人間なのですから飽くまで人間らしく、生き生きとした感覚で、感じた事を感じた儘に表現して行くべきです。曾て報道を騒がせたバラバラ殺人事件の様に、全体を一つ一つ切り刻んで見ただけでは唯の生気の無い、見ていて胸の悪く為るコメントに過ぎません。ワイン通達が雁首揃えて犬見たようにグラスに鼻を突っ込んでクンクンやる姿を三けん離れて見守っている今日この頃、こういったコメントにややもすると私も陥りがちな為(何故なら常套句化したテイスティング用語の単なる羅列の方が一々語彙を考えないで楽ですので。もしくはそれだけ感情移入の出来ない、或いは心を動かさない優等生ワインが多いという事でもありましょうか)、これは自分自身に言い聞かせるものでもありますが、自分の感覚と感情を信じて、勿論分析する視線も忘れずに、健康的な身心をもたらす健康的な食事と共に、皆々様にはご機嫌麗しく飲酒と人生を謳歌して頂きたく願って止みません。悪文を書き連ねましたが、意中お汲み取り下さい。

コロナウィルスと共に在る令和三年、風薫る爽やかな季節

〈追記〉上記以外の特徴例

・アルコール添加酒:アルコール由来のツーン感、突き抜けるような白・緑を思わせる刃の様な匂い。石灰や粘土の ミネラル 香、白玉団子(精米歩合が高い=精白率が低い)<上新粉(精米歩合が低い=精白率が高い)、特に(大)吟醸酒は香り高い純粋さと清冽さと共に、木の芽や青草、新緑、青竹の香り。一方本醸造はより野暮ったい印象で、バナナや大根様のミネラル香

・純米系:炊いた米(高精米歩合=低精白率)< 搗き立ての餅(低精米歩合=高精白率)、純米吟醸は米寄り、純米大吟醸はフルーツ寄り。高精米歩合には栗の香り

・山廃酛(+熟成:石川県白山地域)、生酛 系無濾過純米酒:キノコ系の香り

・生貯蔵:バナナ、メロン、炊いた米、ライラック等の香り

・普通酒:糖類添加による品の無いあからさまな甘っぽい匂い

・樽酒⇒樽

【教育訓練用参考資料】清酒のにおいとその由来について (平成23年7月) (nrib.go.jp)

本日の箴言

 原料の米が無味無臭で、ブドウの様な多様性がないから、これに特徴を与えるのは麹カビと酵母の性能、杜氏の技能の流儀、風土の特色などに頼る他はない。日本酒の品質の差はごく狭い。しかし吟醸酒、純米酒、普通酒と、僅かな差を拡大して楽しむ事は、無限の喜びが隠されている。

秋山裕一『日本酒』

休日の一本

自然酒、五人娘、純米酒(精米歩合70%)、生酛(寺田本家、千葉県香取郡)

 透明度の高い淡いイエロー。ふくよかで豊かな香りは独特な自然さが感じられる(或いは他の酒が総じて不自然なのか? 聞くところによると、生酛と銘打っていても乳酸菌だけが天然の蔵付きで、酵母は市販の物を添加している蔵が大多数なのだが、それは全量酵母無添加は現在極めて困難を極める遣り方だからで、それを実現しているのは日本で当蔵のみとの事。又、栃木県の仙禽せんきん、そして奈良県の美吉野醸造など数える程の蔵が一部の酒で実施している)。生酛由来の乳製品系(ヨーグルト、バタークリーム)、蒸米、キルシュ、百合やラベンダー、黄桃や花梨に柿、栗やきな粉、粘土、白スパイス、ウド、ナツメグ、ウーロン茶、泥炭ピート、綿飴など、深く香気を吸い込むほどまた別の要素が感じ取れる重層的な香りは渾然一体となっている

 極めて清らかな第一印象から、生酛的ドライさと共に肌理細かい高いレベルの酸がミディアム(+)ボディに乗り、濃くのある苦味と共に余韻までブレる事無く一貫して引き続く。膨らみのある米の 旨味 を活かす為にもシャルドネ(樽)グラス

「無農薬自然米、蔵付き天然菌、無添加、無濾過」から生まれる、流行に左右されず「我が道を行く」という感じの、他と一線を画す個性テロワールは初心者には難しかろう通向きの一品。さわりなく喉元を流れ落ちるプレミアムウォーターの様なテクスチャーは秀逸。13%のアルコール度も優しく飲み疲れない。「自然の恩恵に畏敬と感謝を忘れず」「微生物との共生を目指す」独自の哲学の下、戦後に掛けて力仕事の殆どが近代化、合理化、機械オートメーション化して何処の蔵からも聞かれなくなっていった酛摺り唄を微生物達に聞かせながら、本当に丁寧に造られた事が分かるお酒(→寺田本家、酛摺り唄https://www.youtube.com/watch?v=1PtbTQH2DwI)(6:30)

仕事を請け負う日々の中、「周りの目ばかり気にして唯一無二の自分を殺していないか?」と問い掛けられたようで、思わずハッとした
千葉県:首都圏では酒蔵数最多。軽快辛口タイプが本来の特徴だが、現在では目指す方向がそれぞれ異なる個性派が揃う。合わせるべき郷土料理はコチラ⇒http://kyoudo-ryouri.com/area/chiba.html