第十瓶 テイスティングの目的

 さて、此処でテイスティングの抑々そもそもの目的についてお話しする必要がありましょう。やや堅苦しく退屈なものになるでしょうが、お時間が御座いますればお付き合い下さいませ<(_ _)> (以下『日本ソムリエ協会教本』及び『児島速人CWEワインの教本』に準拠)

 Tasting = Dégustation = 唎き酒、試飲(五感を通し頭で行う。感覚だけに頼っては上達しない)

 究極の目的はあらゆる意味での「品質確認」。一般的な目標点は、客、生産者、世界のプロなど様々な人との対話。但しテイスターの立場により方法や内容も変わって来る

 ①ワインメーカー:製造から出荷までの品質管理(果汁の状態、病気や事故の有無など衛生面も含めた醸造中の状態、熟成具合、瓶詰めのタイミング、出荷時期の決定等の判断)。加えてワインの性格を見極め、今後どう発展するのかの把握

 ②酒類業者:品質、スタイル、将来性等をチェックし、買い付けるかどうかの判断。適正価格と市場における販売戦略の考察

 ③展示会・品評会:スタイルや品質等をカテゴリーに合わせて比較、優劣をつける

 ④公的機関:栽培、醸造上の条件が、法で定める基準を満たしているかの判断

 ⑤ソムリエ:品質チェック、販売戦略、価格設定、料理との相性、サービスの温度・方法・タイミング、使用 グラス 等の決定

 ⑥ワイン教育者:解説書(テクニカルデータ:使用品種の割合、新樽何%で何か月熟成/ステンレスタンクで何日浸漬したか等)付きの教育的要素を含む、一般啓蒙用またはワイン学校用

 ⑦ワイン愛好家:品質チェック、自分の趣向に合うかどうかの確認 (ワインへの愛情に基づく判断、ポジティブな鑑賞)

 ⑧レストランでのホスト:ラベルチェック、品質チェック、同席者へのパフォーマンス

〈目的〉

 ①自分の嗅覚、味覚の能力を知り、経験を積む事によって更に自分の力量を磨く(一種のスポーツで苦痛も伴う)

 ②テイスティングで感じた事によって、ワインのヴァリエーションを知る

 ③ワインを分析し、記憶する(アプローチの順序:畑の環境→品種→栽培→醸造→熟成)

 ④感覚を言葉で表現する事を身に付ける(言葉にする事で自己把握する:文化的行為。何十何百と口に出し、もしくはノートに書いて自分のフォームを作り、テイスティングシートに頼らない)

→ ワインの欠点を探すのではなく、個性及び特性を知る事。先入観を持たずに主観で行うが、個人的な好みを前面に出さない事。

  経験を重ねれば品種・国・年号を当てる事が出来るようにはなるが、それは飽くまで副産物。消費者の立場では常に「ワインを楽しむ事」を忘れずに(「表現する為に飲む」のは資格試験)

〈標準〉

 ①環境:静寂、無臭、無振動、適正な温度調節。自然光か無色の照明、明るい色の壁・テーブル、白のテーブルクロスかマット(波長の異なった人工光の下では単調に見え、光源が異なれば自ずと色合いも異なる。色=光)

 ②グラス:国際標準化機構ISO規定グラス(通称INAOグラス)。注ぐ量は50ml(グラスの1/3~1/4程度)→ 香取り易い/スワリングでベリー系の香りが強まる/タンニンを強めに感じる=味気無い分析用=美味しい/不味いの好みを見る物ではない

 ③温度:赤16~18℃、白・ロゼ12~15℃、泡7~8℃(高めの方が香味を感知し易い)

 ④順序:若い→古い、並級→高級、辛口→甘口、軽い→重い(例外:ボルドーでは古い→若い〈タンニン量の少ない方から〉、ブルゴーニュでは赤→白〈 渋み は酸味を邪魔しない、白→赤だと酸味がぼける〉という場合も)

 ⑤体調:身心ともに良好状態。飲酒後、喫煙直後は避ける。香辛料の強い食物、チョコレート、ミント入り菓子、酸を多く含む飲料や果物、アルカリ性の練り歯磨きは控える

 ⑥時間:昼食前の午前中が望ましい(起床後から様々な影響やストレスを受けていず、若干の空腹感がある状態。呼称資格2次試験もこの時間帯に合わせて実施されている)

 ⑦その他:化粧品、整髪料、香水など、周囲に強い香りを発するものは使用厳禁。濃い口紅も控える

本日の箴言

 ワインの素晴らしさは出会いにある。1本ごとに自然の産物に出会える。風があり、土があり、造った人の姿がある。だからこそ飲む者はワインとの対話を心がけて、どうしたら美味しく楽しめるか工夫をしたい

太田悦信『おとなのワイン塾』

休日の一本

Schramsberg Blanc de Blancs 2013 (Napa Valley, California)

 淡いレモンイエロー。繊細で非常に層の厚い泡立ちは持続力も長い。

 爽やかだが充実したレモンが主体のピュリニー的な香り。他にライム、グレープフルーツ、スイカズラ、白スパイス。時、温度と共に青林檎や白桃、イースト(2年以上の シュール・リー)、サワークリーム(MLF ワインのブレンド)、ほんのりヴァニラ(樽 発酵ワインのブレンド)の香り

 穏やかなアタックから凝縮感のある果実味、鋭いけれども爽快な酸がしっかりとしたストラクチャーを形成し、少量の樽発酵ワインのブレンドによる厚みと複雑さを伴いながら、非常に長い余韻まで一貫する。天麩羅(塩・たれ):イカ(淡白ながら噛むほどに出て来る風味と)、穴子(控え目な濃く味に同調)、海老(MLF有のシャルドネとの定番の相性)、またデザートとして柚子餅とも良く合う

 シャンパーニュとの違いは矢張り充実した果実感。五月の空の様に澄み渡った輝かしいスパークリングワイン〈2017年5月〉

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