グラス

 グラスはワインの印象に大きな影響を齎す。無色透明、薄く唇に抵抗感の無い物がベスト(液が唇に触れ合う表面積がより大きく密接に為り、より繊細に感じられる)。下から上に向かって口が開いている物は勧められない(匂い 分子が逃げてしまう)。またワインを注ぐ量は小振りなら膨らみより1cm下、大振りなら2㎝下。スワリングのコツは下方を持つ事(ステムがぐらつくと遠心力が掛からない。台座が固定されるほど回し易い)

 以下、機能性を徹底したRIEDELより、画像・説明文の引用及び加筆。(機能性を追求する余り高価な割に極めて強度性に欠けるのが致命的な欠点。リーデルグラスを割る事に飽き飽きした当サイト管理者の意見では、ブランド志向者でないのなら、似た形状のより安価で丈夫なグラスを探求される事をお勧めします)

◎基本的概念:口に入る時の液体の幅が広いほど酸味を、狭いほど甘味を強く感じ、液体の流れが速いほど酸味を、遅いほど甘味を強く感じる

当サイトで瓢箪ひょうたん型グラスと言えばこれ。下記のグラスの最上部に開きを加えた物。新世界ピノ・ノワール用。しっかりとした酸味と赤系果実のアロマを持つ赤、ロゼ・シャンパーニュやブラン・ド・ノワールなどピノ・ノワール主体の泡にも(米1粒落とすとそれが起点となり泡立ちが発生し、泡が弾けると共に香気成分が発散されるため香りが取り易くなる)。口の広がりが香味にエレガントさ、優しさを齎す。純米(大)吟醸 酒や 生酛 にも(甘味と 旨味 以上に酸味を活かしたい時に)。非常に実用的で汎用性が高い形状にもかかわらず、店頭で目にする事が殆ど無いのが嘆かわしい( ;∀;)

旧世界のピノ・ノワール、ネッビオーロ用、シラーにも。大きなボウルが香りを十分に開かせ、ワインが舌先に導かれる事で強い酸味と円みのある果実味とのバランスを整え、柔らかい調和を齎す

カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー用、シラーズにも。瓜実うりざね型の緩やかなすぼまりと大きなボウルにより、複雑で芳醇な香りを解きほぐす。ワインが舌上で横に広がる為、厚みのあるボディに焦点を生み、強い 渋み を和らげる

(赤)サンジョヴェーゼ、ジンファンデル、(白)リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン用。縦長でしっかりとしたすぼまりを持つスタンダードなボウル型のため幅広く対応。ワインは舌先に導かれ、舌の中央を直線的に流れ、果実味と酸味のバランスを整える。(大)吟醸酒にも

シャルドネ(樽無し)、ヴィオニエ用。しっかりとした酸味と豊かな ミネラル 分をもった、辛口白に対応。適度なすぼまりによって、ワインの持つ様々な味わいの要素を整える

シャルドネ( 有り)用、熟成白や熟成泡にも。ワインが舌上でワイドに広がり、柔らかな酸味と豊かな果実味のバランスを整える。純米酒にも(旨味を活かしたい時に)

スパークリングワイン(タンク内発酵:シャルマー方式や、瓶内二次発酵:トラディショナル方式のスタンダードランク)用。深い底が圧力を高める事で、ワインに溶け込んだ泡をより小さく美しく立ち上がらせ、且つ滞在時間を長くする事で気体の発散を抑える。フルートグラスでもボウルに膨らみのあるタイプで、ワインと空気の接触面積や香りを留める空間の容積は大きくなり、香りと果実味を感じ易くする。発泡清酒にも

スパークリングワイン(瓶内二次発酵の ヴィンテージ、プレステージランク)用、ソーヴィニヨン・ブランやビールにも。フルートグラスでは十分に発揮できない複雑で芳醇な アロマ、肌理細かい泡、気品ある酸味やミネラル感と果実味が優美に織り成すハーモニー。400年経って、フルート型は十分に香りを楽しめず余り美味しくないと気付く地元シャンパーニュ生産者達。ソムリエ協会もシャンパーニュには白ワイン用グラスを推奨

(追記)・クリスタルガラスは1~30%の酸化鉛(24%以上が高品質)を含む為、光の屈折度・透明度が高い。強度も高めるので薄く仕上がる。現在ではマンガンや亜鉛を使用する物もあり。ワインを何日も入れっ放しにしない限り無害。微小な穴が開いているため手洗いの方が良い。一方普通のガラスはクリスタルより割れ易いが、厚めなため食洗器可

・良いグラスは食器棚などの臭いが籠もるので、使用前に洗う/デカンターの様にリンスする/1,2時間前に出して置く、のいずれかを行う事

〈洗い方、拭き方の注意〉

 ① ねじれの力に弱いので端と端を持たない事、常に滑らせる事(スポンジで摘まむと危険、優しく拭く感じ)。スポンジは大きめの方が力が分散される。またスポンジの油が残ると、スパークリングワインの泡を殺すか極端に出す事に(異物として起点となる)

 ② お湯は水捌けが良い為、水垢が付くリスクが少ない。純水は ミネラル 分が無い為、自然乾燥でも水垢が出ない( に含まれるミネラルは水分と一緒に蒸発しない為、水垢と為って残る)。レストランでは薬局販売の精製水を、デカンターをすすぐ時に使用

 ③ 逆さ乾燥/水切りは危険(重心がグラスのステムにかかり不安定)

 ④ マイクロファイバー、毛羽の立ち難い使いこんだ麻リネン、日本手拭いの大きめの物で拭くとやり易い。常に布の量でフワッと感を維持して力を加えない事

〈順序:台座 → ステム →(ボウルを持って)布巾を詰めて中を拭く。外は撫で拭き〉

布巾に残る柔軟剤の成分はスパークリングワインの泡立ちを殺す。煮沸がベスト

 ⑤ 酔って洗わない!(ワインは水より跡に残らないヨ)

・グラスの持ち方はステムでもボウルでも、自分が格好良いと思うようにお好きに持たれるが宜しい。一般にボウルを持つのは無粋とされておりますが、体温の影響はないとの検証もあり、実際に現在では脚の無いグラスも多数製品化されております。(試しにスパークリングワインを飲み終えて冷えたボウル部分に触れてご覧なさいませ。数十秒位では自分の手が冷たくなるだけでグラスは温かいどころか冷たい儘です。私が冷え症だからでしょうか? 中身が入っていれば尚更ですネ。日本酒のお燗も、40℃のお湯で同じ温度のぬる燗にするには10分以上も掛かります。したがってブランデーグラスを中指と薬指の間に挟んで掌で持つのも、温める為というよりは寧ろ格好の良さからであります)

・乾杯時にグラスを合わせるのも一般に認められておりませんが、これはマナー違反では御座いません。無論割れるほど勢い良くぶっつけ合うのは不届き千万ですが、「カチンカチンの乾杯はASI(国際ソムリエ協会)でもやりまくる」と元ASI会長の田崎真也氏も仰っておりました(飲み口は薄く繊細ですので、より厚いボウルの最も膨らんだ部分を軽く当てると良いでしょう)

現ASI会長〈本記事投稿時点〉Andrés Rosberg氏(Malbec World Day)